第1部では、慢性痛が単なる筋肉や関節の問題ではなく、 脳や神経系が関与する現象であることを解説しました。
第2部ではさらに踏み込み、 慢性痛の背景にある自律神経、エネルギー代謝、運動、栄養、 そして近年注目されている疼痛科学について詳しく解説していきます。
慢性痛患者の多くに共通してみられる特徴があります。
これらの背景には自律神経の乱れが存在しています。
自律神経は大きく分けると 交感神経と副交感神経に分類されます。
戦うための神経です。
危険から身を守るために働きます。
回復のための神経です。
慢性痛患者では交感神経優位が長期間続いていることが少なくありません。
つまり身体が常に「非常事態モード」になっているのです。
筋肉が硬くなる原因は単純ではありません。
多くの人は 「筋肉を使いすぎたから」 と考えます。
もちろんそれも一因です。
しかし慢性痛患者の場合、 脳が身体を守ろうとして無意識に筋肉を緊張させ続けていることがあります。
痛み ↓ 防御的収縮 ↓ 血流低下 ↓ 疲労蓄積 ↓ さらに痛み
という悪循環が形成されます。
この状態では単純に筋肉をほぐしても根本解決にはなりません。
近年の慢性痛研究では、 エネルギー代謝の重要性が注目されています。
身体はATPというエネルギーを使って活動しています。
ATPを作る方法は大きく2種類あります。
素早くATPを作れます。
ただし効率は悪く、 疲労しやすい特徴があります。
などで利用されます。
ATPを大量に作れます。
効率が高く疲れにくい特徴があります。
で利用されます。
本来、姿勢維持は有酸素系が担当します。
しかし慢性痛患者では交感神経優位により、 身体が常に危険を感じています。
すると解糖系優位になり、 本来は瞬発的な動作で使う速筋線維が姿勢保持に動員されます。
これが 「常に力が入っている」 「脱力できない」 という状態につながります。
ATP工場とも呼ばれるのがミトコンドリアです。
慢性痛患者では ミトコンドリア機能低下が指摘されることがあります。
ミトコンドリア機能が低下すると、
といった状態になります。
つまり慢性痛は 「エネルギー不足の身体」 とも言えるのです。
慢性痛研究で非常に有名な理論です。
人は痛みを経験すると、 再び痛くなることを恐れるようになります。
すると、
痛み ↓ 不安 ↓ 動かない ↓ 筋力低下 ↓ 体力低下 ↓ さらに痛み
という悪循環に入ります。
これを恐怖回避モデルと呼びます。
実際には動いても問題ない状態なのに、 脳が危険と判断し続けているのです。
プラセボ効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
良いと思い込むことで症状が改善する現象です。
その逆がノシーボ効果です。
こうした情報は脳に危険信号を送り続けます。
その結果、 ON細胞が活性化し、 痛みが長引くことがあります。
慢性痛患者では運動が重要です。
しかし目的は筋肉を鍛えることだけではありません。
こうした効果が期待できます。
特に初期段階では、 高強度トレーニングよりも 低負荷の有酸素運動が重要になります。
痛みは神経の問題でもあります。
つまり神経の材料が必要です。
筋肉や神経の材料になります。
酸素運搬に必須です。
不足するとミトコンドリア機能が低下します。
ATP産生に重要です。
神経の興奮を抑える働きがあります。
不足すると筋緊張や疲労感につながります。
徒手療法は筋肉を押しているだけではありません。
心地よい刺激を通じて、 脳へ安全な情報を送っています。
その結果、
が期待されます。
つまり徒手療法は、 身体が本来持つ回復システムを働かせるための手段なのです。
慢性痛は単なる筋肉や関節の問題ではありません。
脳、神経、自律神経、代謝、栄養、睡眠、運動、心理状態など、 多くの要素が関与する複雑な現象です。
だからこそ、 一つの原因だけを追いかけるのではなく、 身体全体を見ていくことが重要になります。
ほしのうみ整骨院では、 痛みの出ている場所だけではなく、 脳・神経・筋肉・自律神経・生活習慣まで含めて評価し、 患者様が本来持っている回復力を最大限に引き出すことを目指しています。
慢性痛は「治らないもの」ではありません。 身体の仕組みを理解し、 正しい方向からアプローチすることで、 痛みの悪循環から抜け出すことは十分可能なのです。

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